
ているおそれがあっても、それを阻止することができない。このため検証及び監督方法の強化が極めて重要になった。 第二に、「能力評価における実技能力の重視」である。従来の知識要件に加えて実際の能力が重視されなければならないこととなり、それぞれの資格証明に必要な能力基準が確立されることになった。 第三に、「資格証明へのFUNCTIONAL APPROACHの導入」が取り上げられた。このテーマに関しては、特に我が国の船員制度近代化との関連が深いので、改めて後述するが、現行条約の職位・階級ごとの資格の他にFUNCTIONごとの専門的な能力の資格が取得できるようにするというものである。 第四に、「教育・訓練と評価におけるCOMPUTERの導入」である。シミュレータやその他の最新の訓練技術及び設備の効果的な利用は一層発展させる必要があるということで、能力基準の評価や海上履歴の緩和に関する規定、指針を含めて、条約見直しの中でさらに検討されるべきであるとされた。 2. 条約の改正作業とその中で論議の争点となった問題点 (1)改正条約の早期発効と改正作業の促進 既述のとおり、条約の見直しが開始された後も、人的要素を原因とする大きな海難事故が続発したので、IMO事務局はSTCW条約の改正作業の促進と早期実施を最重要課題として取り扱うこととなり、次のような方策が取られることになった。 第一に、改正条約の採択においてTACIT方式を採用したことである。通常このような条約改正においては改正の採択後、締約国の2/3により批准された時に改正条約が受諾されたものとされるが、これをEXPLICIT方式といっている。これに対してTACIT方式とは改正条約が採択され回章された後、一定期間内に締約国の1/3以上または100G/T以上の世界商船船腹量の50%を占める締約国が反対しない限り、受諾したものと見なされる方式である。 78年STCW条約の規定によれば、条約本文の改正にはEXPLICIT方式が必要である。しかし、条約付属書の改正はTACIT方式で可能なので、IMO事務局は今回の改正に際して条約本文については一切手を触れず、付属書の改正だけに止めて早期の発行を実現することにした。実際には期限である平成8年8月1日までに反対する国はなかったので、この日に条約は受諾されたものと見なされ、6ヵ月後の1997年2月1日に発効することになった。 しかし、条約の部分的な改正であるならばともかく、今回のように全面的に見直され、新しい制度や考え方が大幅に導入された場合、本文の変更なしに付属書の改定を行うことでその間に矛盾を生じることはないのか、また、本文に規定されていない規則や、本
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